ティアマトはメソポタミア神話を代表する女神!そのあらすじを外見・能力と共に解説
あなたは神話に登場する竜といったら何が思いつくでしょうか。有名な竜の中で、メソポタミア神話に出てくる『ティアマト』がいるのですが、このティアマトはメソポタミア神話では『原初の海の女神』と言われており、数多くの神々を生み出した伝説が残っています。(地母神と言う)
他の神話で登場する地母神は、さまざまな神を作ったという話だけになることが多いのですが、メソポタミア神話におけるティアマトに関しては、自身が生んだ神々なのにその子孫と戦う事になるという変わった物語になっています。
そこで今回は、メソポタミア神話の物語のあらすじをティアマトの外見や能力と共に徹底解説していきます。
目次
メソポタミア神話に登場するティアマトとは?
ティアマトは冒頭でもお伝えしたように、地母神と言われる多くの神々を生み出した、原初の海の女神になります。ティアマトは竜のイメージが強く凶暴ではないかと言われているのですが、女神と言っているように『女性』なのです。
これは『エヌマ・エリシュ』という、バビロニア神話をまとめた書物に書かれているものになります。
ティアマトは後でお伝えしますが、実に『11の神や魔物』を生み出しており、のちの神話において影響を与えるきっかけになったと言っても過言ではありません。ティアマトはメソポタミア神話において唯一子孫と戦った地母神となっていて、生涯としては波乱万丈であったと言えますね。
ちなみにティアマトの名前についてですが、これはアッカド語で海という意味である『tiamtum』が由来と言われています。そしてティアマトの原型は最古の都市国家であるシュメールに伝わる海の化身『ナンム』とされています。
神話においてのティアマトの外見と性格
「アニヲタWiki(仮)」https://t.co/fh0Z3cnxjZがティアマトの外見を抜粋してくれている。
— TOMITA_Akio (@Prokoptas) November 13, 2019
・果てしなく巨大である
・母乳をあふれさせる豊かな乳房を持つV-57
・長大な尻尾があるv-59
・角がある〔典拠不明?〕
・頭蓋骨をもつIV130 pic.twitter.com/NIjslm7UnW
メソポタミア神話に登場するティアマトの外見や性格はどんなものになっているのでしょうか。基本的にティアマトに関しては、人によって意見が分かれており、定まっていないのが現状です。
一般的な解釈としては、外見は
- 女神であるということから、性別は「女性」である
- 大きさとしてはとにかく巨大だということ
- 長い尻尾を持っている
- 角が付いている
- 頭は一つで脳ミソもそこにある
- 目は2つ付いている
- 蛇と言われることもあるが、足はある
など、竜に近い見た目であることが分かります。(翼は書かれていませんが)
一方ティアマトの性格としては、
- 自身が生んだ子供に対しては深い愛情を持っている
- 何をされても怒る事が無い
- 代わりに一回怒ると大変な事になる
といったように、ティアマト自身はかなり寛容な女性であることが分かります。その代わりに一回怒ると手が全く付けられなくなるという面も持っているため、性格がはっきりしているとも言えるでしょう。
神話の中でのティアマトの能力とは?
ティアマトの外見や性格が分かったところで、彼女自身が持っている能力についてみていきます。ティアマトは神のみではなく悪魔も生み出しています。そのため、彼女は神話で語られている内容を見る限り、一番の能力として自身の任意でいくらでも子供を産むことが出来るという能力があるようです。
しかも普通であれば夫がいなければ成立しないはずなのに、彼女の場合は夫がいなくても自身のみで出産が可能というのですから、さすが地母神と言わざるを得ません。
そして子供を生み出す能力以外に、
- 怒り狂った時に周りに毒気や覇気をまき散らしたことから『毒』と『覇気』が使える
- 敵の力をそぎ落とす呪いの言葉が使える
といったものがあり、これはあくまでも彼女が怒った時、或いは戦闘をする時のみ使用するというような感じですね。彼女が怒り狂った際は誰にも止めることが出来ないとしているため、彼女自身の力は相当なものであると推測できます。
メソポタミア神話のティアマトについてのあらすじ
【ティアマト】(神話・古代バビロニア) バビロニア神話の女神で、名は「苦き水」の意。数多の神々を産んだ原初神。夫のアプスーを謀殺するがマルドゥクによって倒される。切り裂かれた亡骸は一つが天、一つが地になった。乳房は山となって泉が湧き、眼からはチグリスとユーフラテスが生じたという。
— 竜伝承bot (@DragonologyBot) August 16, 2021
ではここから、ティアマトが登場するメソポタミア神話についてのあらすじを紹介していきます。メソポタミア神話の中で夫のアプスーは『冥界に存在した淡水を指す男神』として何もない世界に一番最初に誕生しました。
そしてその対をなしていたのがティアマトであり、彼女は『冥界に存在する海水を指す女神』として存在していました。この夫婦はどちらも人や動物と同じ姿をしていなく、蛇または竜の姿をしていたとなっています。
ティアマトが生み出した子供や子孫
夫であるアプスーとティアマトが交わり、ラハムとラフムという兄妹を生み出しました。このラハム・ラフムの兄妹は赤い帯と6つの巻き髪を持っている男女の女神、もしくは雌雄の大蛇として表現されたそうです。
そしてそのラハム・ラフム兄妹は結婚し、その間にアンシャルとキシャルという兄妹が産まれ、さらにアンシャル・キシャル兄妹もラハム・ラフム兄妹と同じように結婚し、その間にアヌが産まれます。
その後もアヌの子供としてエア(エンキともいう)が産まれ、数々の子孫が産まれていきました。
これがティアマトの子供・子孫が出来ていった流れになりますが、このようになった理由としては、アプスーの『淡水』とティアマトの『海水』が混ざり合った事で、海底に沈殿する泥を神格化したからと言われています。
自身の子孫を討伐する事になったティアマト
数々の子供・子孫を生み出していったティアマトたちですが、これだけ数が多いとやはり騒がしいようで、アプスー・ティアマト夫婦は機嫌を損ねたそうです。
そこで夫婦はムンム(生命を与える力という意味を持った知識の神)と相談し、自分達の子孫である神々を討伐する事を決意します。
ところが、この計画が子孫の一人であるエアに気付かれてしまい、討たれる前に先手としてアプスーを昏睡させて討伐。さらにムンムも捕らえて監禁することになります。
そしてエアは討伐したアプスーの亡骸の上に自身の神殿を作り、ダムキナを嫁として子供の『マルドゥク』を産みます。マルドゥクは夫のエアよりも優れた能力を持っていたそうで、アヌはマルドゥクに『4つの風』を与えました。(これがのちに役に立つことになる)
マルドゥクはアヌよりもらった4つの風をおもちゃにして遊ぶようになります。その影響でさらに騒がしくなったからか、ティアマトがついに激怒して新世代の神々を討伐する事を決意しました。
別の説で描かれているティアマト
ちなみにここでは最初に『アプスー・ティアマト夫婦が子孫を討伐する事になった』と書いていますが、ある説では夫婦では無く『アプスーが単独で討伐しようとし、それをティアマトが止めようとした』となっています。
ティアマトは性格として非常に寛容な女性であり、何をされようが怒ることは無かったとなっています。
さらに後半では『ティアマトが激怒して新世代の神々を討伐する事にした』となっていますが、これも別の説が存在しています。
マルドゥクがアヌより頂いた『4つの暴風』に乗って世界中を遊びまわったことで、若い神々から『マルドゥクを討伐するべきだ』との声が高まり、その要請を受けたことからティアマトが仕方なく重い腰を上げて戦う決意をした、となっています。
ここではこのように2つの話があるので、どちらが神話として正しいのか不明です。
ティアマトとマルドゥクの戦いが始まる
ティアマトが神々の討伐を決意するにあたり、討伐するための魔物をティアマトは生み出すことにしました。その魔物とは以下になります。
名前 | 特徴 | 説明 |
ムシュマッヘ | 七岐の大蛇 | 7つの頭を持つ大蛇 |
ウシュムガル | 龍 | ムシュマッヘと同一視されている竜 |
ムシュフシュ | 蠍尾竜 | バビロンの竜として名高い聖獣 |
ウガルルム | 巨大な獅子 | ライオン型の怪物でティアマトの権力と軍勢の強さを示した |
ウリディンム・ウルマフルッルー | 狂犬 | 獅子人間と解釈される獰猛な犬 |
ウム・ダブルチュ | 嵐の魔物 | ライオンの体に鷲の頭と翼という姿をした風の魔物 |
ラハブ | 海魔 | 凶暴という意味を持つ海の魔物 |
ギルタブリル・ギルタブルウル | 蠍人間 | 太陽神シャマシュと深い関係にあったマシュ山の守護者 |
クサリク | 翼のある雄牛 | ギルガメシュ叙事詩に登場する聖牛 |
バシュム・ウシュム | 毒蛇 | マムシまたは角の生えた蛇 |
クルール | 魚人間 | 雄の人魚でメソポタミアでは普遍的な精霊 |
実に11体の神・魔物を生み出すことで自身の勢力としました。
そしてアプスーの亡き後、次の夫としていた息子『キングー』に天命を記した粘土板を与えて、キングーを軍勢の総大将に任命し、先ほどの魔物たちを従えて新世代の神々に攻撃を開始します。
一方マルドゥクは、風神であるエンリルから『この戦いに勝てば至高神としての地位を認める』と言われており、気合いを入れていました。そのためか、神々が魔物の姿に怖気づいている中で唯一彼だけは怯んでいませんでした。
しかも彼もまた人外レベルに達しており、
- 目と耳が4つずつある
- 口から火を吹く
- 髪の毛はヤギ
- ヒゲは扇
- 足首はリンゴの木
- 男根が蛇
という特徴があったそうです。そして、ついにティアマトとキングーたちの軍勢はマルドゥクたち神々と対峙します。
ティアマトの最期
マルドゥクの軍勢と対峙して戦いが始まったのですが、魔物たちを従えていたキングーは異様な姿をしているマルドゥクに対して戦意を喪失してしまいます。
仕方なくティアマトは、マルドゥクと1対1で決着をつけることにしました。マルドゥクはまず彼女に対して、
- 『アプスーを見殺しにして、すぐさま後釜に据えるとは!』
- 『誰のせいで神々が争っていると思っているのか!」
- 『俺一人に対して大軍勢で差し向けてくるとは!』
などといった挑発を行いました。それに対してティアマトは逆上し、マルドゥクを丸飲みにしようとその大きな口を開けました。
するとマルドゥクは、アヌより授かりし暴風をティアマトの口内に向かって放ちます。そしてその暴風によってティアマトのお腹はパンパンに膨れ上がり、口を閉じることが出来なくなります。
チャンスと見たマルドゥクは持っていた矢を口内に向かって放ち、うち数本が彼女の内臓と心臓に刺さってティアマトは絶命し、マルドゥクは彼女の討伐に成功しました。
ティアマトの亡き後の世界
マルドゥクはティアマトの討伐に成功した後、夫のキングーを捕らえて彼が持っていた『天命の粘土板』を奪って自身の胸に付けます。
その後マルドゥクはティアマトの亡骸へ向かっていき、彼女の亡骸を利用して『天地を創造』することを思い付きます。
彼が行った事としては、
- ティアマトの体を2つに裂いて天と地を作る
- ティアマトの目からティグリス川とユーフラテス川を流れさせる
- ティアマトの尻尾を切り離して天と地を繋ぐ
などをし、一方でマルドゥクの父であるエアは捕らえていたティアマトの夫であるキングーを殺し、その血を使って人間を作り出し、戦いによって疲労した神々を休ませることにしました。
ティアマトが戦いのために産んだ魔物たちは、牙や角といった武器になるようなものを抜かれて、マルドゥクたちの神殿の守護者になったと言われています。
こうしてみるとティアマトは良い最期とは全く言えないわけですが、代わりに自身が死ぬことによってその後の世界を作る糧となり、行く末を見守る立場になったと考えれば、非常に重要な役割を担っていたというのは間違いないでしょう。
まとめ:ティアマトはメソポタミア神話において重要な役割を持っていた
今回はメソポタミア神話に登場する『ティアマト』について記事を書いてきました。ティアマトは数々の神を生み出し、子孫もその後において重要な役割を担う存在となりました。
また、ティアマトは非常に寛容な女性であったと言われており、2つの説が飛び交っていますが、世界を作るという意味で言えば重要な役割を果たしていたことは間違いありません。
そのティアマトは最期は良い終わり方ではなかったですが、世界の行く末を見守る存在として、これからもその役割を担っていくことになるでしょう。