鵺(ぬえ)の妖怪伝説とは?泣き声や正体はトラツグミが関係している?
あなたは「鵺(ぬえ)」と呼ばれる妖怪をご存知でしょうか。鵺はさまざまな動物の体の一部が合体しているような外見をした妖怪です。
鵺は平安時代の武将である源頼政が退治したという伝説が有名となっています。鵺自体は謎であり、その正体も諸説あってどれが真実か不明です。
そこで今回は、鵺を退治した源頼政の伝説を中心に、鵺の正体について有名な諸説を紹介していきたいと思います。
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目次
妖怪と呼ばれる鵺(ぬえ)とは?
出典:Wikipedia
鵺(ぬえ)は「平家物語」を中心に、「古事記」や「万葉集」にも名前が登場する妖怪です。
鵺自体は平安時代後期に出てきたとされていますが、天皇の代によってこの部分に関しては違いがあるようで、正確な時期は不明となっています。
のちに紹介しますが、鵺は異形の怪物と言われており、この怪物を平家物語に登場する源頼政が退治したとして書物に残されています。
鵺の特徴として何があるか
とりあえずラフ画で左京風味に
— 刺青師 左京 /彫師 (@sakyotattoo) November 25, 2021
鵺(ぬえ)。
顔が猿、手足は虎、胴体たぬき、尻尾ヘビ
なんじゃそら。妖怪だし何でもありね。
また気が向いたら平家のオッサン追加して、拡大の清書。
背中用はサラっとは行かない。
今日は辞め。スーパー半額タイムね🏃♂️💨 pic.twitter.com/iGLYLhLt2n
鵺は冒頭でも言ったように、さまざまな生き物の体の一部を合体させたような外見が特徴的です。
どんな組み合わせかというと、一般的には
- 顔➔猿
- 胴体➔狸、または虎
- 手足➔虎
- 尻尾➔蛇
こんな感じとなっています。
合体と言われて思いつくのが、ギリシャ神話に登場する「キマイラ」や「キメラ」ですが、これの日本版と認識して頂ければ問題ありません。
神話においてのキマイラやキメラは神獣として扱われますが、鵺は妖怪、魔物ということで扱い方に違いはあります。
あとは、鵺は飛び回る際に雷が鳴ると言われており、妖怪ではなく雷獣とされる場合もあるんだとか。
鵺の名前の由来と鳴き声
鵺と名付けられた背景ですが、鵺は漢字を分けると「夜」と「鳥」となります。
つまり「夜に鳴く鳥」となるのですが、この特徴を持つ鳥に「トラツグミ」がいます。
このトラツグミが夜に鳴く際に「ヒョーヒョー」と鳴くのですが、その鳴き声があまりにも不気味でした。
なので当時の天皇や貴族たちは不吉なことが起きる前触れでは思い、そのたびに祈祷をしていたと言われています。
「トラツグミに似た泣き声を発する得体のしれないもの=鵺(ぬえ)」といった形で、怪物として認識したのが由来のようです。
妖怪「鵺」の正体は何?
異形の妖怪である鵺の正体とは何なのでしょうか。
正体に関しては諸説あって、完全に「これだ!」というものはありません。つまり仮説でしかないということ。
それを踏まえたうえでその正体の仮説として、
- トラツグミ説
- レッサーパンダ説
の2つを紹介していきたいと思います。
鵺の正体その①トラツグミ
まず一つ目の仮説は「トラツグミ説」です。これは先ほどから何度も出てきているので察しがつくと思います。
もともと鵺という名前が付いたのはトラツグミの泣き声に似ているところから始まっています。夜に鳴く鳥というところですね。
鵺という名前は後付けされたもので、怪物と言われるようになったのは平安時代以降になります。
平家物語でも「鵺の声で鳴く得体のしれないもの」として書かれているだけで、名前はここでは言及されていません。
「古事記」や「万葉集」でも鵺の名前が出てくるものの、現在ではこの鵺の正体はトラツグミとして定着しています。
鵺の正体その②レッサーパンダ
2つ目の仮説は「レッサーパンダ説」です。今まで話してきた内容で考えるとレッサーパンダという説はまず無いと思ってしまいます。
しかし、JR東日本の新幹線車内雑誌「トランヴェール」の2016年9月号にて新説が披露されたとして、ネットニュースメディアであるHUFFPOSTが記事として取り上げています。
古生物学者である荻野慎諧(おぎのしんかい)氏が提唱しており、その内容が
私は尻尾が狐というのであれば、現在も存在する動物の中に心当たりがあるのです
答えは、レッサーパンダです
長い褐色の胴体は狸に似て、狐のようにふさふさした尻尾を持ち、虎のような鋭い爪があります。夜行性で高所に登る習性も合致します
出典:HUFFPOST
実は鵺の外見の特徴として、「源平盛衰記」では
- 背中➔虎
- 足➔狸
- 尻尾➔狐
といった形で描かれているのです。
そしてこの源平盛衰記で記されている特徴がレッサーパンダに酷似しているとして、レッサーパンダを鵺の正体だと荻野氏は語っているのです。
これに関しては古生物学者である荻野氏の見解でしかないので、あくまでも仮説の一つでしかないでしょう。
妖怪である鵺を退治した源頼政の伝説とは?
鵺を退治したことで有名である源頼政の伝説とはどんな内容なのでしょうか。
仁平(1151年~1154年)の時、二条天皇が毎晩のように何かに怯えていたことがあり、位の高い僧を呼んでお経を唱えますが効果がありません。
そこで大臣たちが集まり会議を重ねていったのですが、その中で天皇の御殿に黒い雲がやってきていることが原因ではないかとしました。
この黒い雲の退治を命じられた源頼政は、その黒い雲が出現する夜を待ちます。やがて出現した黒い雲を確認してみると、何やら怪しげな物体が。
頼政は持っていた矢をその黒い雲に向かって放ちます。すると黒い雲の中から、
- 頭が猿
- 体が狸
- 尻尾は蛇
- 手足が虎
の怪物が落下してきたのです。そして頼政はこの怪物をバラバラに引き裂き、うつぼ船に入れて川に流しました。
流れ着いた先は現在でいうところの兵庫県芦屋市。ここに住んでいた浦人たちは2度と災いが起きないようにするため、蘆屋川のところに塚を作って怪物を封じ込めたそうです。
ちなみにここで出てきた鵺は本当の鵺ではなく、「鵺の泣き声に似た怪物を頼政は退治した」というのが正しいとされています。
妖怪「鵺」は実在するのか?
妖怪とも怪物とも言われる鵺ですが、この鵺は本当に架空でトラツグミやレッサーパンダが正体なのでしょうか。
実はそうとは限らないようで、関西地方の至る場所で鵺に関係した塚や史跡が多く存在しているのです。
場所を挙げると、
- 阪神芦屋駅近くにある松浜公園の一角に存在する「鵺塚」
- 大阪市都島区にある「鵺塚」
- 京都府岡崎公園運動場付近にある「鵺塚」
- 京都府京都市の二条公園にある「鵺池」
- 京都府亀岡市にある「矢根地蔵」
- 兵庫県西脇市の「長明寺」
など。それぞれで鵺を頼政が葬った際に埋めた場所であったり、頼政が射抜いて血に染まった矢を洗った場所であったり、矢を作る際に使った竹を採取した場所であったり・・・
色んな形でこの鵺退治に関わった場所として今でも残っているのです。
また、この鵺退治に限らず、静岡県浜松市の浜名湖の西にて鵺が落ちてきて、鵺代、胴崎、羽平、尾奈に鵺の死体の一部が落ちてきたという伝説もあります。
地名として用いられる名前には必ず意味がありますので、何も無くてこのような名前は使われません。
そう考えれば、正体は分からないにしても鵺自体は実在していた可能性はあると推測できます。
妖怪である鵺と鵼の違いは何?
「ぬえ」を漢字で書くと「鵺」や「鵼」になりますが、一応書き方としてはどちらでも正しいようです。
とはいえ、正しいとは言っても別の漢字であるからにはやはり違いはあるのではないかと思ってしまうのが人間だと思います。
調べてみると、学習院大学名誉教授である諏訪春雄氏によれば、中国の地理書「山海経(せんがいきょう)」に描かれている、
- 想像上の鳥である「白鵺(はくや)」
- 別の想像上の怪鳥である「鵼(こう・くう)」
を日本では同一視して「ぬえ」と呼んでいたという話があります。
そしてその影響からか、鵺も鵼も本来は別の意味であるにも関わらず、それが混同してしまっているんだそうです。
なので恐らくもともとは別の意味としてそれぞれの漢字は使われており中国では分けていたはずが、日本に入ってきた途端に両方を同一視したことで意味もそのまま同じという形で広まってしまった、ということなのではないでしょうか。
「鵺の鳴く夜は恐ろしい」の意味とは?
鵺の鳴く夜は恐ろしいのキャッチコピーの筆捌きが最高だよな!堪らない! pic.twitter.com/MwBmxy5P1J
— コリン・サリバン (@hyeongdo_Ji) April 5, 2021
鵺を使った有名なフレーズに「鵺の鳴く夜は恐ろしい」というものがあるのですが、これはどういった意味があるのでしょうか。
このフレーズは金田一耕助シリーズの一つである「悪霊島(あくりょうとう)」のキャッチコピーとなっているもので、これは映画の中で意味は込められていたようです。
刑部神社の神主である刑部守衛の妻・巴(ともえ)が若い時に逢引していたのですが、その時の合図が鵺の泣き声でした。
色々と不幸が重なった結果巴は二重人格者となり、別の人格になっている時にターゲットの男を見つけては鵺の鳴き声で引き寄せます。
そして男を誘い出したところで巴に殺害されかけた男が海に落ち、たまたま通った船に助けられたのですが、この際に
「あの島には恐ろしい悪霊が憑りついている・・・腰と腰がくっついた双子・・・鵺の鳴く夜は気を付けろ・・・」
というセリフを放っているのです。要するに、
「鵺の鳴く夜に引き寄せられた男は無事に帰ってくることはない」
ということを意味として込めていた、となるわけですね。
まとめ:妖怪である鵺の正体はトラツグミが濃厚か?
今回は日本に伝わる異形の妖怪である「鵺(ぬえ)」について記事を書いてきました。
鵺はギリシャ神話に登場するキマイラやキメラの日本版ともいえる妖怪で、その姿は怪物として浸透しています。
鵺の正体はトラツグミ、またはレッサーパンダのどちらかと言われていますが、さまざまな文献でトラツグミ関係の話が多いので、個人的にはトラツグミが正体ではないかと推測。
とはいえ、妖怪の正体というのは基本的に明かされることは少ないので、この鵺に関しても謎のままで終わるんじゃないかとも思っています。
あなたもこの鵺の正体についてどうなのか、考えてみてはいかがでしょうか。
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