日本の妖怪「牛鬼」とは?愛媛県を中心とする伝説や登場するアニメについて解説
あなたは「牛鬼」という妖怪をご存知でしょうか。牛鬼とは頭が牛で胴体が蜘蛛というような姿が一般的で、浜辺に出現すると言われている妖怪です。
牛鬼はさまざまな地域で伝承が残っており、中には牛鬼の実物と言われる骨やミイラが展示されているところがあります。
また、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」にも牛鬼は登場し、その能力も最強レベルを誇っています。
そこで今回は、各地域に残っている牛鬼の伝説や実物について解説し、後半では牛鬼が登場するアニメではどのような設定がされているのか紹介していきたいと思います。
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目次
妖怪「牛鬼」とは?
牛鬼の読み方としては「うしおに」または「ぎゅうき」になります。牛鬼の特徴は冒頭でも話していますが、基本的には頭は「牛」体は「蜘蛛」のような姿になっています。伝承によって体は「鬼」としている場合もあります。
牛鬼は浜辺に出現すると言われる妖怪で、性格は残忍で獰猛、人を喰い殺すことを好むという恐ろしい妖怪です。
次から紹介していく伝承においてもこの話は多く、いかに牛鬼という妖怪が恐れられているかが分かります。
伝承によっては別の妖怪である「濡れ女」と共に連携プレイしてくるという話もあり、厄介極まりない存在であると言えます。
牛鬼の妖怪伝説としては何がある?
ではここから、各地域に伝わる牛鬼の伝説について解説していきたいと思います。
伝承そのものの数は多くありますが、今回はその中から、
の5つを紹介していきたいと思います。
討伐した牛鬼の血によって牛鬼淵が出来た
1つ目に紹介するのは、牛鬼の伝承の中で最も有名な愛媛県に伝わる伝説になります。
宇和島地方でかつて牛鬼に人や家畜が襲われるという事件が多数発生していた時があり、この際に大洲市の山伏(霊山を回りながら修行をしていた人の事)に牛鬼の討伐を依頼しました。
山伏は村で牛鬼と対決したのですが、牛鬼に対してホラガイを使用して真言を唱えたところ、牛鬼がその真言に対して怯みます。
山伏は牛鬼が怯んで動けないうちに、牛鬼の眉間に所持していた剣で突き刺して体をバラバラに切り裂きます。牛鬼をバラバラにしたことで大量の血が7日7晩流れ続け、これにより淵となりました。
これが現在に至るまで存在している「牛鬼淵」が出来た原因と言われています。
牛鬼に出会っただけで病気になって死ぬ
2つ目に紹介するのは、和歌山県に伝わる伝承になります。和歌山県西牟婁郡にある牛鬼淵は淵の底が海に繋がっているとされていて、その淵の水が濁っていた場合は牛鬼が居ると言われています。
ここにいる牛鬼に出会ってしまうと、病気になって最終的には死んでしまうとされています。
仮にこの場で牛鬼に出会ってしまったら、
「石は流れる、木の葉は沈む、牛は嘶く、馬は吼える」
といった物事の逆を言うことで、牛鬼に襲われずに助かるとされています。なぜこの言葉が牛鬼に効果があるのか不明ですが、ある種の真言の一つなのかもしれません。
塵輪鬼と呼ばれる鬼が牛鬼になる
3つ目に紹介するのは、岡山県に伝わる伝承になります。岡山県瀬戸市内に残る伝説で、神功皇后(じんぐうこうごう:日本の第14代天皇である仲哀天皇の妃)が三韓征伐に赴いた際に、塵輪鬼と呼ばれる悪鬼が神功皇后に襲い掛かってきました。
神功皇后はこれを弓で討伐し、塵輪鬼の体は部位それぞれで牛窓の
- 前島
- 青島
- 黄島
を作り出しました。ですが、討伐した塵輪鬼の魂は成仏出来ていなく、神功皇后は帰り道に牛鬼に化けた塵輪鬼と再び戦うことになります。
この際に住吉明神が牛鬼の角を掴んで投げ飛ばしたことで牛鬼に化けた塵輪鬼は討伐され、これにより牛鬼の体はバラバラになり、部位それぞれで
- 黒島
- 中ノ小島
- 端ノ小島
に変化していったそうです。
百手祭の由来となった牛鬼伝説
4つ目に紹介するのは、高知県に伝わる伝承になります。高知県香美市で次郎吉という男性が、1776年の時に峯ノ川で牛鬼を目撃したと言われています。
高知県では百手祭と言われる祭りがあります。これは高知県のとある村で、牛鬼に牛を喰われてしまい、さらにその牛を救おうとした村人もまた牛鬼に喰われてしまうという事件が発生しました。
近森左近という人物が村で起きている事件の話を聞きつけて村へやってきて、そこに現れた牛鬼を弓矢を使って一撃で撃退。喜んだ村人たちがその模様を真似しながら話をしたのが、この百手祭の由来となったとされています。
牛鬼の祟りによって不治の病になる
5つ目に紹介するのは、三重県に伝わる伝承になります。三重県において牛鬼は、祟り神のような存在であるとされています。
三重県南伊勢町の東部にある五ヶ所浦の洞穴に昔牛鬼が居ると言われていたことがあり、五ヶ所城の城主であった愛洲重明が牛鬼に弓を放って討伐したのですが、牛鬼の祟りによって愛洲重明の正室が不治の病になってしまいました。
重明は正室が病にかかったあと正室を避けるようになり、京からやってきた白拍子を愛するように。
そしてこの影響で正室から事情を聞かされた親である北畠氏は愛洲家と完全に仲が悪くなり、その怒りによって愛洲家は滅ぼされてしまったと言われています。
正室を不治の病に罹らせただけでなく「愛洲家の滅亡」も含めて牛鬼の祟りであったのかもしれません。
妖怪である牛鬼を神様として祀っている地域がある?
牛鬼に関する伝承のほとんどは人間に危害を加えるものばかりでしたが、中には牛鬼を神様とする風習があるようです。
牛鬼には正体があり、それがツバキの根ではないかと言われています。
ツバキには神様が宿るとされていて、それにより牛鬼が悪霊を祓う神の化身として敬っている地域があるとのこと。
ツバキは岬や海辺に辿り着くといったことから、牛鬼が現れる場所も沿岸や浜辺であることを考えると確かに一致しています。
これが真実であるということではないですが、可能性として考えても牛鬼の正体がツバキの根という見方はあながち間違っていないと言えるでしょう。
妖怪牛鬼は実在した?
牛鬼は妖怪である以上は、唯の伝説として捉えるのが普通です。しかしながら、実は牛鬼の物と思われる体の部位が見つかっており、実際にその実物を保管している場所が存在します。
ここではその中で、
- 牛鬼と思われる獣類の頭蓋骨
- 牛鬼の手のミイラ
- 牛鬼の物とされる角
の3つについて紹介していきたいと思います。
牛鬼と思われる獣類の頭蓋骨
まず1つ目は頭蓋骨です。この頭蓋骨は、徳島県阿南市にある賀島という家の祠に祀られている物になります。
昔、賀島の先祖が農民たちを苦しめる牛鬼の退治を依頼されて討伐をしたときに、その首を持ち帰ったと言われています。
頭蓋骨そのものは獣類であるようですが、これが果たして本当に牛鬼のものなのか定かではありません。
ただ、この頭蓋骨を見る限り牛の頭に見えるのは間違いないので、牛鬼の頭蓋骨である可能性は否定できないでしょう。
牛鬼の手のミイラ
出典:九州大図鑑 様
2つ目は牛鬼の手首から上の部分がミイラ化したものになります。このミイラ化した手首は福岡県久留米市にある石垣山観音寺に保管されています。しかし現在は非公開となっていて、お寺の境内にある看板に写真で載っているという形になっています。
この牛鬼は足代山に出現したと言われており、人々に対して被害を被っていました。村人たちはこの牛鬼をなんとか退治できないかと考えましたが、力が強くどうにもなりません。
そこで村人たちは金光坊然廓上人(こんこうぼうねんかくしょうにん)という人物に牛鬼の討伐を依頼。上人は宝剣を持って山にこもり、夜になった際に牛鬼が出現して上人と相対します。
上人はあっという間に牛鬼を討伐し、この時に牛鬼の手首を切断したとされ、この時に切断した手が石垣山観音寺に保管されているものと言われています。
牛鬼の物とされる角
3つ目は牛鬼のものとされる角になります。この角は香川県高松市中山町にある「根来寺(ねごろじ)」に保管されています。この牛鬼は江戸時代初めに山田蔵人高清(やまだくらんどたかきよ)という弓の名手が退治したものと言われており、その牛鬼は、
- 顔が猿
- 体は虎
- 両前脚はムササビまたはコウモリ
といった姿をしていたんだとか。これは根来寺に残されている掛け軸に描かれていたもので、現在はその掛け軸と遺物はネット上にのみ公開されていて、一般では諸事情により公開はしていないそうです。
牛鬼と土蜘蛛の違いとは?
牛鬼を語る上で必ず出てくる妖怪がいて、それが「土蜘蛛」です。なぜなら牛鬼と土蜘蛛の両方のビジュアルがかなり似ているからで、それによって牛鬼と土蜘蛛が同一視されている場合があるのです。
しかし、この2つの妖怪に関しては姿は酷似しているものの、一応別々の妖怪という形になっています。仮に一致している部分を挙げるにしても、その凶暴性ぐらい。
土蜘蛛の場合は外観だけで見れば蜘蛛の姿ですが、牛鬼は先ほども語ったように頭が牛で体は蜘蛛というのが一般ではあるものの、
- 頭が鬼、体は牛
- 頭が龍、体は鯨
- 頭が猿、体は虎
といったように、さまざまなパターンが伝承には存在しているので、一概に「これが牛鬼の姿!」というようなものがありません。
結局のところ明確な違いも無いので、人それぞれの考え方に依存するといった感じになりますね。
ゲゲゲの鬼太郎に登場する牛鬼は最強?
牛鬼はアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」に登場しますが、ここでの牛鬼の扱いに関してはどうなっているのでしょうか。牛鬼は、
- 頭:牛
- 体:蜘蛛
- 虎柄模様
という姿で描かれていて、伝承での外見を元としたような形になっています。ゲゲゲの鬼太郎に登場する牛鬼は敵として出てくる妖怪の中でも最強クラスの強さとなっていて、鬼太郎たちをかなり苦しめた存在でした。
ここではその牛鬼の能力や物語の展開について解説していきたいと思います。
ゲゲゲの鬼太郎においての牛鬼の能力
トラウマモンスター図鑑
— ワニガメマン (@vQGrdWDxuktjA2E) February 18, 2021
牛鬼(ゲゲゲの鬼太郎)
2期からシリーズ毎に登場している怪獣クラスの大妖怪。牛の頭を持つ大蜘蛛。気体状の本体が生命体に憑依することで出現する。憑依された鬼太郎が牛鬼化するシーンがトラウマ。特に6期は作画に気合いが入っており、かなり恐ろしい。 pic.twitter.com/dykWscE79O
牛鬼はシリーズを通して複数回登場しますが、牛鬼の能力としては、
- 自身が倒された際に倒した者に憑依する
- レーダー脳
- 千里眼
- 牛の数千倍の筋力
- 像の牙の100倍の威力を持った爪
- 自身を隠すことが出来る砂
などがあります。
特に自身を倒した相手に憑依する能力は極めて恐ろしく、憑依した相手を牛鬼に変えてしまうのでガチでヤバイ。
鬼太郎も牛鬼を倒すことは出来ましたが、この憑依能力によって鬼太郎一行を殲滅させる寸前までに至らしめました。
牛鬼は迦楼羅神によって封印される
牛鬼回による歴代の迦楼羅様登場シーン
— オオカワ (@masaki0326k) August 26, 2018
2~4期:目玉おやじの案で村人総出の祈りで登場。
5期:自ら火口に飛び込んだ鬼太郎を陰から助ける。
ちなみに1期では牛鬼の話は放送されていない
今期はどう登場するのだろうか・・#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/Ovxh9xq94D
鬼太郎に憑依したことで全滅手前まで持っていった牛鬼でしたが、この時8万年前に封印された神である「迦楼羅(かるら)」によって鬼太郎と牛鬼の分離に成功し、牛鬼はそのまま封印されました。
迦楼羅神は毒を喰らう神とされているため、毒を武器としている牛鬼にとっては天敵でしかなく何も出来ません。
牛鬼は基本的に敵として登場しますが、鬼太郎の味方として出ていることがあります。
味方として登場する時は敵として出てきた牛鬼とは別の個体で、ぬりかべと肩を並べるほどのパワーファイターとなっています。
味方の時ではあまり活躍する場が少ないので、やはり敵としてのイメージの方が強いと言えます。
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ぬらりひょんの孫に登場する牛鬼
まだ間に合うかしら(どきどき)
— 久慈🎴🍶🐸 (@kuzigen) June 22, 2020
ぬらりひょんの孫の牛鬼をお願いしたく!!(黒髪の方w pic.twitter.com/zi0WxcBXM8
牛鬼はゲゲゲの鬼太郎以外でのアニメでは「ぬらりひょんの孫」にも登場します。ここでの牛鬼は、主人公の奴良リクオの祖父であるぬらりひょんが組織する奴良組系の「牛鬼組」の組長を務める者として出てきます。
牛鬼は普段はかなりの慎重派で物静かな性格となっていますが、戦闘になればそんな性格とは真逆となり、かなりの苛烈さを極めます。
使用する武器は日本刀で、技としては相手を惑わす妖術を使います。
性格で見てみると、伝承の牛鬼に似る部分はあるので、完全にオリジナルという感じではないですね。
まとめ:牛鬼は実在していた妖怪なのかもしれない
今回は日本の妖怪「牛鬼」について記事を書いてきました。牛鬼は愛媛県を中心とした伝承が数多くあり、その伝承のほとんどは人間を喰い殺すことを好むという恐ろしい姿で描かれています。
ですが、地域によって牛鬼を邪気を祓う神として敬う風習も存在しているので、見方は人それぞれで変わると思われます。
また、牛鬼の実物と思われる体の部位が各お寺や家で管理されており、妖怪としては珍しく本物の牛鬼が存在していたのかもしれないと考えると、妖怪好きの方たちにとってはロマンの塊と言えるでしょう。
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